市丸誕生日記念
お題提供:『6倍数の御題』さま
1.読書
2.お月見
3.秋の空
4.運動会
5.実り
6.紅葉狩り
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1.読書
いつもはちょーとからこぅただけで大慌てするキミは、
せやけど本を読み出したらあっちゅう間に集中してまう。
例えば。
肩並べて座ってみたり。
本越しに見詰めてみたり。
キミの名前を呼んでみたり。
そうゆうことしてもちぃとも気付かへんのん。
正直、面白ない。
しゃあけどそれ以上の邪魔をせんのんは、
一心に字面を追うキミの眸が好きやから。
いつか同じひたむきさでボクを見てくれんか思いながら、
ボクはキミの隣で暇を持て余す。
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でもほんのり幸せだと思う。
邪魔者扱いされないから(語弊有)
2.お月見
「うさぎ」
「だんご」
「すすき」
「せんべい」
「かぐや姫」
「まんじゅう」
「…しろちゃん、食べ物ばっかり」
「満月っつって連想するモンだろ? どれも丸いだろうが」
「そうだけどー…」
「ホラ、次、お前の番」
「むー…じゃあ、市丸隊長」
「……なんでアイツが出てくんだよ」
「おつきさまの周りってぼんやりしてるでしょ?
市丸隊長が笑ったときと似てるなぁと思って」
「…そうかよ」
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お月見しながら連想ゲーム。
ぼんやり、というよりは冷たくて、且つ儚い・薄いというイメージ。
3.秋の空
最近、五番隊は平和らしい。
担当地で巨きな虚も出ないし、他隊とのトラブルもない。
隊を束ねる二人が真面目だから仕事もたまらない。
要するに暇なのだ、この上なく羨ましいほどに。
なので雛森は毎日のように菓子を作る。
今日は大福、昨日は焼き菓子、一昨日は羊羹、その前はみたらし団子。
それらは彼女の友人に優先的に配られるのだが、
唯一吉良だけは、そのいずれも口に入らない。
市丸が横取りしてしまうのだ。
今日も今日とて奪ってきた大福を片手に、
市丸は晴れ渡った秋空を見上げた。
「天高く馬肥ゆる秋――なァ…」
今秋はボクもやばいやろか。
そう思いはするものの。
やはり譲りたくはないのだ、例え可愛い副官の彼にさえも。
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食欲の秋。
雛森ちゃんは市丸たいちょにもちゃんとあげてます。
それプラス、イヅルの分。
でも市丸たいちょはいくら食べても太らないと思う。
大丈夫だよ(笑)
4.運動会
市丸隊長に誘われて、三番隊のお部屋で的当て遊びをした。
方向音痴のあたしは見当違いの方向におはじきを投げて、
障子に見事に穴を開けた。
折悪く吉良くんに見付かっちゃって、市丸隊長ともども追いかけられた。
市丸隊長がいなかったら、あたしはきっと逃げ切れなかった。
吉良くんをまいてようやく落ち着いたのは、
瀞霊廷のはずれの、人気のない建物の屋根の上。
市丸隊長は息ひとつ乱していなかったけれど、あたしはだめ。
心臓も呼吸も大騒ぎ。
少しだけ休んで腰を上げたら、今度は屋根に裾がはさまった。
市丸隊長に手伝ってもらってどうにか外すと、くつり、隊長は笑った。
「的当て、駆けっこ、引っ張り合い…」
「え?」
「なんや、運動会みたいやな」
…本当だ。
気付き、あたしもくすりと笑った。
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的当て→玉入れ、駆けっこ→リレー、引っ張り合い→綱引き。
苦しいなぁと思いつつ。
5.実り
「あ、ブドウですか?」
「せやよ。お裾分けしてもろたん。
雛森ちゃんも食べはる?」
「わ、いいんですか?」
「エェよ」、答えてボクは、
ひとつを口に含んで雛森ちゃんを引き寄せた。
目ェ白黒させる彼女の口に、
舌を使ぅてブドウを喰わせたる。
雛森ちゃんの顔が、リンゴみたいになった。
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雛森リンゴのできあがり。
6.紅葉狩り
ひらひらひらひら、紅葉が舞う。
キミを独り占めするが如く、
ボクを嘲笑うが如く、
ひらりひらり、降り注ぐ。
それが悔しゅうて、キミにまとわりつく葉っぱを払い、
細っこい躰を抱き締めた。
「市丸隊長?」
腕から聞こえる戸惑いの声に応えるんは、この腕の強さで充分。
あかんよ、キミはボクのもん。
そない簡単に別のもんに抱かれんなや。
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自分のものだから。
例えそれが葉っぱであっても、取られるのは厭なんです。