花日和
ほっこりと陽の射す、暖かい日のことだ。このところ急に冷え込む日が続いていただけに余計そう感じるのかもしれない。
だから。
日当たりのいい窓辺で雛森がうつらうつらとしてしまうのも、まぁ無理はない。
彼女の寝顔を見やり、幸せそうやなァと、市丸もうっすらと頬をほころばせる。こんなにぬくぬくとした気分は久々だ。
やがて、かくりと。
雛森の身体が傾ぎ、隣の市丸にもたれかかる形になった。
その拍子に「…ふゎ?」と、まぶたが揺れた。
もう起きてしまったのか。そう残念に思いつつ、同時に雛森の暖かさと重さに破顔しながら、市丸はその顔を覗き込む。もちろんわざとだ。
「お目覚め?」
至近距離の市丸に、けれど雛森は驚きも慌てもせず。
「…いちまるたいちょう……」
それはもう、やわらかい陽射しのように。
ほっこり、笑んだ。
柄にもなく市丸が何も返せずにいると、間を置かず、雛森の身体が再び力を失い、ずるりと彼の膝元に倒れ込む。
市丸はしばらく動かず雛森を見、「…雛森ちゃん?」、そっと呼ばわる。
「寝はっとん?」
問には寝息が答えてくれた。
「……」
市丸はしばし言葉をなくし、
くしゃり、笑った。
―――了