花
髪に花を飾られた。小振りの小手鞠だ。
恥ずかしくはあったけれど嬉しくもあったからそのままにした。
けれど日番谷くんは、花飾りを見るとひどく不機嫌な顔になって。
「どうしたんだよ、それ」
「飾ってもらったの」
「誰に」
市丸隊長に。
そう答えると、日番谷くんの手が伸びて、あっと思ったときにはもう小手鞠の花は落ちていた。
「何するの!」
「死者の装飾なんだよ」
「え?」
「花を髪に飾るのは」
死装束だ。
嫌悪感も顕わに、日番谷くんは繰り返す。
「あいつは絶対、分かっててやってるぞ」
うん。そうかもしれない。
でもね。
死装束と分かっていても、あたしは花飾りを捨てられなかったよ。
―――了