「鳥になりたいんだ」
いつだったか、「鳥になりたい」、そう呟いたことがある。
その日は穏やかに晴れた、風の気持ちいい日で。
蒼穹の下、唄うように鳴く鳥が羨ましくて、
つい口をついたのだと思う。
けれどあの人は、「やめとき」と薄く笑った。
「やめとき、鳥なんぞ。
両の羽根をもいで檻に閉じ込めとうなる」
そして、うん、そう。
気配もなく後ろから抱き締められたんだ。
抱き締められるというよりは、
絡め取られると言った方がいいかもしれない。
「ほら、こんなふうに」、そう言わんばかりに。
けれどあの人の腕の中は、今思い出しても心地よくて。
やっぱり思ってしまう。
この腕の中に閉じ込められるなら。
私は、鳥になりたい。
―――了