満たされない
キミの、
意訳(つまりは、)
治すつもりもないくせに
子守唄
街中でふと耳に入り込んだ歌のフレーズ。
「キミノコト考エルト夜モネムレナイケド…」
あァ、ボクとおんなじね。
息苦しいんね。
思い出すたびくちずさむ。
「キミノコト考エルト夜モ」
「キミノコト考エルト」
「キミノコト」
――じゃあ、キミは?
ボクがキミを思うて眠れん夜は、
キミは、如何お過ごし?
ここんとこ、夢見が悪い。
夢の内容は覚えてへんけど、えぇ夢やなかったことは確か。
「…キミのせいよ」
布団の上起き上がり、後味悪い夢の残滓を追い払いつつ口を突くのは、明らかに八つ当たり。
キミの声が聞こえるから眠れるけれど、
キミに会えないから夢見が悪い。
( 言い掛かりつけてでも会いたいんよ、キミに。
言うたでしょう? これは中毒や、て)
キミの声が聴きたい。
歌や本で気をまぎらわせても、ちィとも効きゃあせん。
ボクを夢の世界に連れてってくれるんは、キミとの他愛ない会話だけ。
なぁ、聞かせてぇな、キミの声。
ボクを眠らせたって?
――Stop thinking that you have too many things to do.
小難しいこと言わんと、
キミはボクのことだけ考えとりゃあえぇ。
――I can't.
それができたらどんなに楽か。
困ったね、
眠れる気がせんよ、キミの声が聞こえんと。
毎夜のことで呆れてはる?
それは堪忍、でもあかんの、どうしようもないんよ。
これは中毒、そう、キミの声に。
そして今夜も、ボクはキミに電話をかける。
ちゃんと先に言うとこな、
おやすみなさい、良い夢を。